Last update : 2024.12.25

理事長挨拶

一般社団法人 日本肥満学会/理事長 横手幸太郎/国立大学法人千葉大学長

一般社団法人 日本肥満学会
理事長 横手幸太郎
国立大学法人千葉大学長

肥満とは、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態を表し、日本ではBMI(体格指数)が25以上の場合と定義されています。一般社団法人日本肥満学会は、その前身である肥満研究会の発足から数えて40年以上の歴史を有し、肥満に関わる各領域の専門職が病態・治療・予防に関する研究や調査を行い、知識と技術の向上を図り、国民の皆様への健康増進に寄与してきました。
肥満だけでは医療の対象となりませんが、肥満が糖尿病や脂質異常症、脂肪肝、膝の痛みなどの健康障害をもたらし、これら一つ以上を合併した場合に「肥満症(obesity disease)」という病気と診断します。特に内臓脂肪の蓄積が、病態の形成に重要と考えられています。肥満症は医学的な治療の対象であり、減量治療を行うことで、合併する健康障害の改善が期待できます。肥満症に対する治療は、食事・運動・行動療法を基本とし、効果が不十分な場合には、薬物療法や胃を小さくする外科治療を考慮します。
肥満症の発症には、社会・環境要因や体質が深く関わるため、患者個人の自己管理の問題とはいえず、そのような誤解や偏見(スティグマ)を解消することが重要です。一方、近年、肥満症ではない人が、GLP-1受容体作動薬という2型糖尿病の治療薬をやせるために自費診療で使用し、吐き気、おう吐、急性膵炎や過度な減量に伴う健康被害を生じる例が問題となっており、専門医による適正な治療の遵守が求められます。
日本肥満学会では、2001年に肥満症の診断基準を発表した後、2006年に診療ガイドラインを策定、2011年、2016年、2022年にこれらを改訂し、エビデンスの集積や社会へ啓蒙、医療の質向上に努めてきました。また、日本国内で30年振りとなる新たな肥満症治療薬が登場したことに先立ち、2023年には、肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメントを公表しました。そして、これらの知識を駆使して肥満症に対する包括的な治療を行う肥満症専門医の育成と認定を行っています。さらに、医師や基礎研究者だけでなく、肥満・肥満症の予防やケア・サポートに力を発揮するメディカルスタッフの活動を支援し、スキルアップ講座等の教育プログラムを実施するとともに、専門資格として肥満症生活習慣改善指導士の認定を行っています。
日本肥満学会は、これからも、肥満と肥満症およびその合併症に関する基礎研究・臨床研究を推進し、その予防や治療法の開発と普及を行うなど、医学・社会学的視点を統合した肥満対策を通じて、成果を社会へ還元し、肥満や肥満症をもつ個人の健康寿命延伸とQOLの向上に貢献してまいります。

略歴

1988 年
千葉大学医学部医学科卒業
1996 年
スウェーデン国立ウプサラ大学大学院博士課程修了(PhD)
1998 年
千葉大学大学院博士課程修了(医学博士)
2009 年
千葉大学大学院医学研究院細胞治療学(旧第二内科、現内分泌代謝・血液・老年内科学)教授(~2024年)
2020 年
千葉大学医学部附属病院病院長、千葉大学副学長、国立大学病院長会議会長(~2024年)
2021 年
慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了(経営学修士MBA)
2021 年
日本肥満学会理事長
2022 年
全国医学部長病院長会議会長(~2024年)
2024 年
千葉大学長